過ぎ行く風景
バツイチカケスのゆるゆる人生 BGMも交えて のんびりゆったり歩きます
いらっしゃいませ

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最終バス


バス停










 出張帰りの特急の中、資料に目を通している僕の背広の内ポケットで、携帯が、震えた。


 


 


 僕は、横の同行者をちらりと横目で見ると、席を立って、デッキに向かった。


 歩きながら、携帯を取り出して、発信者を確認する。


 表示されていたのは、僕と妻の、仲人の名前だった。


 


 デッキに着いて、携帯の通話キーを押そうとしたところで、呼び出しは途切れた。


 表示を見ると、電波が届いていない。



 ―― しょうがないか。 秩父の、山の中を走ってるんだし。



 僕はあきらめて、デッキから出て、元の座席へ向かった。


 


 僕の座席の周りには、出張の同行者が数人、座っている。


 全員、背もたれを倒して、みごとに熟睡していた。 無理もない。 みんな、疲れきっているのだ。


 僕は、席に戻って、窓の外を眺めた。


 特急は、深い山の間を走っていて、―― かすかな夕暮れの光が、山の上に、残っていた。


 


 


 関係部署のあいだで、手に汗を握るような情報が、秘密裏に走ったのは、1ヶ月前のことだった。


 会社の製品に使われる部品を納めている、取引先のメーカーが、経営不振に陥っていたのだ。


 そのメーカーとは、20年近い付き合いで、品質や対応も定評があった。 発注額もかなりの金額にのぼっていて、社内の誰もが、そのメーカーを信頼して疑わなかった。



 そこを突かれた。



 まずいことに、そのメーカーに発注している部品は、製品の心臓部に使われる、特注品だった。


 このまま放置すれば、最悪の場合、製品が出荷できなくなる。 すぐに、代わりのメーカーを当たる必要があった。


 さいわい、部品メーカーの経営不振の情報は、まだ表面化していなかった。 表沙汰になれば、メーカーの取引先がいっせいに取引を停止し、部品メーカーは、あっという間に操業停止に追い込まれる。


 切迫した状態の中、対処を引き受けた僕は、代わりのメーカー各社へ、片端から打診を始めた。


 ほどなく、同業他社が、お互い、けん制しながら、同じ行動を起こしていることが判明した。


 部品を作るには、ある程度の技術が必要で、条件を満たすメーカーは、数に限りがある。


 出遅れれば、同業他社に先を越されて、代わりのメーカーを、確保できなくなってしまう。 僕はすぐに、水面下で、各部署へ協力を求め、当たりをつけたメーカーに出張して、交渉をはじめた。


 今日は、4社目のメーカーへの、出張だった。


 


 


 特急が終点に近づくと、車内のアナウンスの声が、ひときわ大きくなった。


 出張の同行者は、そのアナウンスの声に叩き起こされ、眠い目をこすりながら、もうすっかり暗くなった窓の外と、腕時計を見比べて、雑談を交わしている。


 特急は、そのまま、大きなターミナル駅のホームへ滑り込んだ。


 土曜日の夜だった。 この街で一杯やっていくか、という同行者の誘いを、僕は、丁重に辞退した。


 特急の中で着信があった、仲人さんからの電話が、気になっていた。


 


 


 仲人さんは、両親の知人で、市役所に勤務している。


 おおむね温和な人柄で、たまに毒舌になるのが気になるが、落ち着いた話し口に、交友関係は広かった。


 何かの縁があって、6年前、僕と妻を、見合いの席で、引き合わせている。


 


 


 出張の同行者と別れて、時計を見ると、ちょうど、早めの夕食時にあたっていた。


 仲人さんの夕食を、邪魔してはいけない。 そう思った僕は、連絡を少し遅らせることにして、帰りの電車に乗り込んだ。


 電車の車内は、土曜日ということもあって、思ったほど、混んでいない。


 僕は、ドアの側に立って、車窓から外を眺めた。


 電車は、ビルの窓から洩れる照明や、ネオンのまぶしい光の間を、縫うように進んでいく。


 しばらく走ったあと、電車が、ビルの群れから抜け出て、窓の外の光が消えた。 暗くなった窓に、僕自身の姿が、写し出される。


 窓の中の、自分自身と、目が合った。



 ―― ここしばらく、目に生気がない、と、周囲から言われっぱなしだな。



 それを思い出すと、僕は、うんざりして、すぐに、目をそらした。


 このまま、まっすぐに帰りたくない。 ふと、僕は、思った。


 気がつくと、僕は、途中の小さな駅で、電車から降りていた。


 


 


 この駅から、自宅の近くまで、一本のバス路線が伸びているのは、知っている。


 かなりの距離になるが、まっすぐ電車で帰るよりは、気がまぎれるだろう。


 まだ、時間も、夜の8時前だった。


 僕は、改札から出ると、バス停へ向かい、時刻表をのぞき込んだ。


 時刻表は、書き込んである時間もまばらで、驚いたことに、次のバスが最終バスになっている。


 そのうえ、次の最終バスまで、あと40分近く、時間があいていた。


 僕は、肩をすくめた。


 電車に戻るか、一瞬、迷ったあと、僕は、無人のバス停のベンチに、腰を下ろした。


 仲人さんに電話するには、ちょうどいい時間だ。 僕は、鞄をとなりのベンチの上に置くと、携帯を取り出して、キーを押した。


 呼び出し音が数回鳴った後、電話がつながった。


 『はい』


 『―― 夜分遅く申し訳ありません。先ほどご連絡を頂きました、カケスです』


 『ああ、カケスさん』



 仲人さんは、いつもの落ち着いた声だった。



 『いや、その後、どうなってるかと思ってね。 その、―― 奥さんとは』


 『あ、はい。 ―― ご報告せず、申しわけありません』


 『なんとか、うまい方向には、行きそうなのかな』


 『―― いえ。 正直に言いまして、かなり難しそうです』


 『そうか』


 仲人さんの声は、少しトーンが落ちて、残念そうな感じになった。


 『ご両親は、どんなご様子かな』


 『ええ。 ショックを受けていないと言えば嘘になると思いますが、今のところ、大丈夫です』


 『ご両親も、カケスさんの奥さんと、話し合いをされたようだがね』


 『は? 僕の親が、ですか』


 僕は驚いた。 そんな話は、聞いていない。


 『たぶん、僕の親が、なにか、言い間違えたのではないでしょうか。 妻は、出て行ってから、僕の両親とは、全く話をしていませんが』


 『あ、いやいや。 その前の話だ。 奥さんが出ていかれる、数ヶ月前だ』


 『そんな話が、あったんですか?』


 『―― カケスさん、ご両親から、聞いていないのかな』


 『ええ、何も』


 言葉につまる僕に、仲人さんは、困ったような口調になった。


 『―― カケスさんのご両親ね、カケスさんのいない時に、奥さんに呼ばれて、話を聞きに行ってるんだよ。 その ―― 』


 口ごもる仲人さんに、その先の話は、すぐに見当がついた。


 『―― 僕が、いかにひどい人間か、という話を、でしょうか』


 『―― うーん。 まあ、そんな内容に、近かったらしいが…。 ご両親は、カケスさんには、何も言っていなかったようだね』


 話を聞きながら、僕は、その時期の記憶を、必死で思い起こしていた。


 そう遠い過去ではないのに、どういうわけか、記憶がところどころ空白で、断片的になっていた。


 たしか、家庭内で、彼女から、僕のやること成すこと、すべてが、激しく攻撃されていた時期だった。 僕は、彼女が育児疲れで不安定になっている、と思って、受身で耐えていた。


 親からも、「死んだ魚のような目をしている」 とも言われた ―― そんな時期にあたる。



 『―― 僕の両親は、たぶん、僕に、言えなかったんだと思います。 僕自身も、追いつめられていた時でしたから』



 両親には、昔から、自分たちさえ我慢すれば、というようなところがあった。



 『ああ、―― そうだろうね。 ご両親のことは、わたしも、よく知っているよ。 離婚したい、とその場で、カケスさんの奥さんに直接、言われた時は、かなりのショックだったと思うんだ』



 僕は、思わず、携帯を、取り落としそうになった。


 あわてて、左手で、携帯を持ち直す。



 『彼女は、―― そんなことまで、事前に、僕の両親に言っていたんですか ――』


 


 ―― なんのことはない、最後まで事態を把握できなかったのは、僕だけだったのか。


    そんな、大切なことを。


 


 僕は、その後の会話を、うわの空で聞くと、形式的に挨拶をして、電話を終えた。


 


 


 すぐ後ろの駅に、各駅停車が到着する気配がした。


 降りた乗客が、駅の改札から、ぱらぱらと出てきては、それぞれの家へ、歩き去っていく。


 目の前のバス停にも、2、3人がやってきて、時刻表を覗き込んだ。 僕は、となりのベンチの上に置いてあった鞄を、自分のひざの上に置きなおした。


 鞄は、仕事の資料や図面が詰まっていて、いつもより重かった。 


 とたんに、僕は、笑いたくなった。


 なにが、経営不振だ。 なにが、代わりのメーカーだ。 組織で動いている会社なんて、結局は、どうにでも、解決できる。


 でも、家庭には、代わりになるものなんて、ないんだ ――


 


 


 携帯を握りしめる僕の耳に、いつしか、最終バスのエンジンの音が、遠くから響いてきた。


 


  


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