過ぎ行く風景
バツイチカケスのゆるゆる人生 BGMも交えて のんびりゆったり歩きます
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門灯




LaPoste







 誰にでも、きっと、一日のうちで、ほっとする瞬間、ほっとする場所がある。



 それは、例えば、仕事漬けの日々の中で、深夜残業からの帰り道、駅から出る瞬間だったり、なにげない曲がり角に灯る、ひとつの街路灯の明かりだったりする。


 僕にとって、それは、帰宅途中、細く曲がりくねった登り坂の途中の、とある家の、門灯だった。


 その門灯の前を通り過ぎて、坂を上りきれば、自宅はすぐそこだった。


  


 


 家族が戻らなくなり、家にひとりで暮らすようになったからといって、仕事は容赦してくれない。


 その晩の帰りも、自宅の最寄の駅を降りたときには、すっかり日付が変わっていた。


 梅雨の長雨の中、すっかり手に馴染んだ傘の柄を握り締めながら、僕はいつもの家の、門灯の前を通り過ぎる。


 このまま、自宅の玄関を開けても、迎えてくれる家族の姿はないけれど。


 


 


 自宅の門を開けようとすると、小さなポストに、郵便物が差しかけてある。
 半分、雨に濡れたまま。


 僕は、傘を畳みかけた右手を伸ばし、ポストから封筒を抜き取った。
 街路灯の薄明かりの中で、差出人を見ると、区役所、とある。


 僕は、それだけ確認して、傘を畳み、何気なく、玄関の鍵を開けた。


 


 鞄と封筒を、無造作にテーブルの上に置き、シャワーを浴びようとしたが、その時に限って、届いた封筒が気になった。


 テーブルの上の、雨で湿った薄青色の封筒を、ふたたび手にする。
 宛先は、僕の名前だ。
 妙な胸騒ぎがした。 僕は、ためらわず、封を切った。


 湿った封筒から出てきた一枚の紙に、目を通す。



 『      特例給付 支給事由 消滅通知書
                        第C5170XYZ1号
                        平成A年B月C日
                                                D市E区長


   次のとおり手当の支給を終了しますので通知します。


         受給者   カケス
           住所   D市E区F町
        対象給付  児童手当      
        最終支給  平成A年B月──        』


 


 そして、最後の一行で、僕の目は止まった。


 


 『   支給終了理由  ── 児童を監護しなくなった  』


 



 ── 頭から、血の気が引いていくのが、自分でもわかった。


 紙を持つ手が、震えた。


 いつ、区役所は、僕が父親でなくなったと、認定したのか。


 


 児童手当そのものは、子供たちのものだ。


 横取りしようなんて気は、さらさらないし、第一、僕名義の口座はすべて、出て行った彼女の管理下にある。
 僕名義の口座へ振り込まれようが、彼女の口座へ振り込まれようが、最終的に子供たちのために使われれれば、それでいい。



 けれども、この最後の一行は、僕は許すことが出来なかった。 
 こんな残忍な言葉を、いとも簡単に公文書で突きつけられて、なお、笑顔でいられるほど、僕は度量は大きくない。


 


 しばらく立ち尽くしたあと、しかし、僕は、大きく深呼吸をした。


 忘れてはいけない。
 いま、感情の爆発にまかせて、彼女と、戦ってはいけない。


 戦えば、犠牲になるのは、子供たちだ。 大切なのは、彼女と、話し合いをすること。



 僕は、冷蔵庫から冷たい水を出して、コップに注ぎ、一気に飲み干した。


 ともかく、区役所に、事情を聞くだけ、聞いてみよう。 僕は、心を落ち着かせた。


 


 


 翌日の昼休み、会社の食堂で早々に食事を済ませると、僕は人気のない会議室に向かった。


 自分が冷静であることを確認したあと、携帯を取り出し、区役所の児童福祉課の番号を押す。


  2、3回の呼び出し音のあと、すぐに応答があった。


 『── はい、E区役所、児童福祉課です』


 女性の声だった。 僕は、穏やかな口調で、話し始めた。


 『お忙しいところ申し訳ありません。 カケスと申します。 お教え頂きたいことがあるのですが、少々お時間を頂いてよろしいでしょうか。』


 『あ、はい、どうぞ。』


 やや若手の女性の担当者のようだ。


 『昨日、給付事由消滅通知書、というものが、私の自宅に届き、確認させて頂きました』


 『はい、児童手当ですね』


 慣れた口調で、担当者の女性は答えた。 僕は続ける。


 『この通知書なのですが、私には、まったく身に覚えがないのです。 大変恐縮ですが、この通知書が発行されるまでの経緯を、お教えいただけませんでしょうか?』


 『 ── 。 』


 電話の向こうの担当者が、一瞬、言葉を失ったのが、わかった。


 そして、やや、動揺したような口調になった。


 『──あ、あの、少々、お待ち頂けますか』


 『ええ、どうぞ』


 僕が答えると、電話は、あわただしく保留になった。 


 おそらく、正規手続きではない、何かがあったのだろう。 声の調子から、そう感じられた。


 時間にして、5分程度だろうか。 ずいぶん長く感じられる保留音のあと、ふたたび、担当の女性が保留を解除した。


 『大変お待たせして申し訳ありません。 お尋ねの件なのですが ──』


 『はい』


 『あの、── 奥さまが、ご主人さまご本人の了解を得られているとのことでしたので、こちらで手続きのほう、進めさせて頂きまして ──』


 担当者は、言葉に詰まった。 


 やはり、そういうことだったか。


 この担当者を責めても、仕方がない。
 世の中には、児童手当をめぐって、いろいろなトラブルもあるのだろう。 弱い立場の子供を支えるために、正規ルールから少しくらい、外れた対応も、時には必要かも知れない。


 事情は、わかった。
 電話も、そろそろ切り上げよう。 僕は思った。 ただ、── 最後に、これだけは伝えておきたかった。


 『── 大体の状況はわかりました。 ですが、これだけはお伝えさせて下さい。

 支給停止事由に、子供を監護しなくなった、とありますが、現在、妻が子供を連れて実家に戻り、私と会うのを拒んでいます。
 監護しなくなった、のではなく、監護したくても、できないのです。
 監護できない状態の父親は、受給資格がないのであれば、仕方がありませんが──』


 『いえ』 担当者の女性は、僕の言葉を、きっぱりと遮った。


 『たとえば、費用的に、養育の分担をしているのであれば、受給資格はあります』


 『── そうですか。 費用的なものであれば、今までの、児童手当の振込口座を含め、私名義の口座は妻が今も管理しています。 そういったことも含め、今回の妻の申請は、虚偽の申告になりますが──』


 言いかけて、僕は、自分自身を引きとめた。


 もういい。 状況はわかったのだから。 これ以上、突っ込んで、何になる?
 僕は、口調を改めた。


 『いえ ── どうもありがとうございました。 おかげさまで、状況がわかりました。 お時間を取らせて、申し訳ありませんでした。── それでは、失礼いたします』


 『あ、あのっ』


 女性の担当者が、慌てたような口調になった。


 『連絡先を教えていただけませんでしょうか。いま、ご携帯からでしょうか』


 僕の職場は、携帯とはいえ、私用電話を歓迎する雰囲気のところではない。 僕は、答えた。


 『会議が多いもので、もし何かございましたら、自宅の電話の留守録へお願いします。ですが、── 私は単に、事情を知りたかっただけですので』


 『はい、でも、お願いします。 ご自宅の、お電話番号を』


 担当が頑張る。


 もしかしたら、何か、情報をくれるかもしれない。 そう考えた僕は、自宅の電話番号を伝え、再度、ていねいに礼を言って、電話を切った。


 携帯電話を畳むと、僕は、ため息をついて、机の上に置いた通知書を見つめた。


 雨に濡れた通知書は、半日過ぎても、湿ったまま。


 会議室の高い窓を見上げると、まだ、雨が降り続いていた。


 


 


 その晩も、雨は、上がることがなかった。


 
 重い足取りで、家の真っ暗な玄関をくぐった僕は、いつものように、テーブルに鞄を置きかけて、──電話機のランプが、点滅しているのに気がついた。


 昼間の、あの児童福祉課の担当さんからの留守電に違いない。


 直感的にそう思った僕は、部屋の電気を灯けるのも忘れて、電話機の、留守電再生ボタンを押した。


 


 『── 先ほど、お問い合わせのお電話を頂いた、E区役所、児童福祉課のHと申します。


 さっそく、あの、奥様の方にご連絡取らせていただいて、お話した上で、処分のほうは、取り消しをさせていただきました。


 取り消しについては、申し訳ありませんが、何も通知は出ないのですが、これまでどおりの給付を継続させていただく形となりますので、お送りいたしました受給停止通知書のほうは、破棄して頂ければ幸いです。


 それで、今後、その、── あの、もし、受給者が変わる場合につきましては、現在の受給者である、ご主人ご本人に、必ず、直接お手続き頂くとの旨、奥様にはお伝えいたしましたので、もし、そのような場合には、ご連絡を頂ければと思います。
 失礼いたします。ごめんください』


 


 ── 留守電は、そこで、途切れていた。


 


 僕は、しまった、と思った。


 


 あの担当者は、事情を、僕に説明してくれるだけでは終わらず、ご丁寧にも、申請の取り消し処分をしてくれたのだ。


 担当者の行動は、正しい。
 しかし、妻は、あの担当者に、自分の行動を、ものの見事に、阻止されたことになる。


 結果として、僕は、あの負けず嫌いの彼女と戦い、一戦を制したことになってしまったのだ。


 彼女は、態度を硬化させ、意固地になっているにちがいない。


 


  思いがけない、戦いの幕開けだった。


 


 電気も灯けていない、暗い部屋の中で、僕は、窓辺に行き、カーテンを明けた。


 雨のしずくが流れ落ちる窓の外、坂の下に向けて、夜景が広がる。


 その夜景の下に見えるはずの、坂の途中の家の門灯は、もう消えていて、


 ──そのあたりは、深い、闇の中に、まぎれていた。



 


 


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