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咲きに咲くらん(1)

 こんにちは、カケスです。


 下のお話は、僕が10代のころに書いたものです。


 詳しいことは、前書きの記事があります155ので、どうぞ、まずは、こちらをご参照ください。


 


157桜の樹に寄せて


 


 なにしろ、はるか昔のものですので、細かいところはご容赦を ――


 心の疲れたときにでも、そっと、読んでみてくださいね。


 それでは ―― 


 








咲きに咲くらん


 



 僕が通っていた高校の正門前の道には、両側にあきれるほどたくさんの桜の木があった。


 毎年春になると一斉に桜の花が満開になり、花のことなんて全く興味のない僕でさえも、その季節には圧倒されて見上げたものだ。


 狂ったように咲き誇る桜のトンネルは、じっと見ていると自分が吸い込まれて桜に同化してしまいそうで、何故だか無性に僕の心をかき立てた。
 もう長いこと忘れていた仲間たちが、そこに居るような気がして。


 


 卒業してからもう何年も、僕はあの桜を見ていない。


 最近、校門前の道路を広げる工事で、あの桜並木は全部切り倒されることになったのだと、風のたよりに聞いた。


 


 



 


 


 窓際の席というのは良くない。


 暖かい冬の日差しが差してくるので、つい眠くなってしまう。


 特に、退屈な授業の時は。


 


 


 夢うつつの僕の耳に、微かな音が響いてきた。


 どうも楽器の音らしい。 コントラバスの音。 お世辞にもうまいとは言えない。


 どうせ吹奏楽部の連中に決まってる。 コンクール万年最下位のブラバンの出しそうな音だ。


 腕で耳をふさいで、しばらくそのままでうとうとしていたら、体育館から聞こえていたその騒音に、死にそうなサックスの音が加わった。


 もう駄目だ。


 僕は重くのしかかるまぶたを開いて、顔をあげる。


 


 教室に差し込む日差しが、やけに赤いのに気づく。


 慌てて時計を見たら、4時37分だった。 どうやら5時間目の古典の時間に寝入ったまま、誰も起こしてくれなかったらしい。 もっとも、今の時期にのんびりと学校の授業に出席しているのは、就職か、推薦で大学を決めてしまった連中くらいしかいないが。


 僕は全身で椅子を後ろに押して、思いきり背伸びをする。


 椅子が後ろの机に当たって、がちゃんと派手な音を立てる。 かまわずにそのまま机ごと椅子を後ろにずるずる引きずって、席を立った。


 まだ覚めきらない目で、辺りを見まわす。



 誰もいない、放課後の教室。



 僕は妙に手持ちぶさたな感じになって、あわてて机の横にかけてあったかばんを肩にかけ、席を後にした。 クラスメートがいない教室というのは、やけにそらぞらしくて、気まずくなった友達と二人きりでいるような気がして。


 教室を出ようとドアの前まで来たとき、黒板の端のみみずが這ったような文字が目に入って、ふと立ち止まる。
 


 ── 卒業まで、あと37日。


 見るたびに寂しくなって、黒板消しで消してしまいたくなる。 どうしてそんなことを書くのだろう。卒業のその瞬間まで、そんなことは気が付かなくていいのに。
 そんな気持ちを振り切るように、僕は教室のドアを勢いよく開けた。 悲鳴をあげる古びたドア。


 廊下のひんやりした空気が僕を包んだとたん、僕は目白との約束を思い出した。 とっくに約束の時間を過ぎている。いまごろは怒っているに違いない。


 僕は足を早めた。


 


 


 


  もう帰ってしまっていないかと思ったが、体育館の一階にある部室の扉からけたたましいラジオの音が聞こえてきていた。


 僕はため息をついてから、ゆっくりと薄汚れた扉を開ける。


 とたんに、部屋に差し込んでいる夕日のまぶしさに僕は目を細め、ついで騒々しいラジオの音に顔をしかめた。



 「遅刻だぞ、掛須。 何やってた」



 やけに気取ったその声の主は、目白だった。



 「いいから少しボリュームしぼれない? やかましいから」



 ラジカセのつまみに手を伸ばす目白。 部屋全体が嘘のように静かになる。



 「ずいぶんゆっくりだったな。 まさか、寝てたんじゃないだろうな」


 「その、まさかだよ」


 「おまえらしいな」



 目白は肩をすくめた。



 「ところで、そんな大きな音で何聞いてたわけ」



 僕がたずねると、目白は大げさに目を見開いてみせる。



 「今の時期に我々受験生が聞くものっていったら、これしかないだろが」



 質の悪い紙でできた、雑誌みたいな本を投げ出す目白。



 「なんだ、ラジオ講座か」


 「掛須、その、なんだ、ってのやめてくれ。ラジオ講座への差別偏見に受け取れる」



 そのとき、僕の後ろから誰かが僕の背中をつついた。 振り返ると、飛鳥女史がラジ講のテキストの英語のページを僕に突きつけている。



 「ん、飛鳥女史、いたの。気が付かなかった」


 「あー、掛須くん、それってずいぶんじゃない? いない方がよかった?」


 「いや、ほんとに気が付かなかったんだよ。 飛鳥、隅の方にいたでしょーが」


 「まあ、いいけどね」



 女史はひとりで納得したようにうなずくと、突然態度を変える。



 「ねえねえ、掛須くんにここ聞こうと思ってたんだけど。57ページの問3」


 「さー、僕にも分からない」


 「ちょっとぉ!」



 まともに問題を見ようともしない僕に、飛鳥が声を高くした。



 「こないだの校内実力試験で英語が校内トップの人が何言ってんのよお」


 「だから、あれはまぐれだって」


 「ほー、じゃ英語の試験で常時校内ベスト6に入ってんのも偶然の重複か」



 目白が横から口を出す。 こいつは、僕と飛鳥が対立すると、必ず飛鳥を弁護する。



 「・・・All right.  Let me see the question too difficult for you to answer. 」


 「これこれ、この問題」



 僕が説明を始めると、目白も横からのぞき込む。



 「どうして掛須に英語ができるのか不思議でならないな。 しかも、俺の唯一の不得意分野。英語の才能だけ、掛須に盗まれたらしい。 ・・・・俺に返しなさい」


 「でも、僕は頭は良くないよ。 数学の試験で偏差値36取ったこともあるし」


 「で、ちなみに聞くが、志望学部は?」


 「・・・・理工学部」


 「支離滅裂な奴」



 聞いていた飛鳥女史がふき出す。



 「そうそう、掛須くん、継美呼んできて。 あの子もそろそろ帰るでしょ」


 「どこにいんの」


 「えーと、たぶん、図書館の裏で絵描いてる」


 「この寒いのに、酔狂な」



 目白が机の上に参考書の束をどさん、と置く。 あっという間にほこりが舞い上がって、部室に差し込む夕日の筋をくっきりと浮かび上がらせる。 掃除なんて、もう3か月以上していない。



 「継美はO美大にもう進学決まったから余裕だな。 もっとも、美大じゃ4年後に就職で苦労することになるんだが」


 「どうでもいいけど、どして呼びに行くのが僕なわけ?」


 「遅刻した者には厳罰をもって処するのが、我が文芸部の伝統だ」


 「伝統ったって、できてからまだ2年しかたってないじゃないか」


 「いいから行きなさい。 これは部長命令だ」


 「そんなむちゃな」


 「そのかわり、部室の鍵しめとく」


 「わかった」



 僕はあきらめて、かばんを手に扉を開けた。


 



 夕日の差し込んでいた部室とはうって変わって、窓のない廊下は薄暗い。


 さっきまで、すさまじい音でわめき散らしていた吹奏楽部ももう活動を終えたらしく、体育館の一階は静まり返っている。


 階段の壁にあるスイッチを入れる。 廊下のあちこちで青白い蛍光灯が光り出す。 暗いところは、どうも好きじゃない。 目白は、こんな僕をガキだといって笑うけれど。


 廊下の薄暗さのせいか、きしみながら開く体育館の重い鉄製の扉を開けたときは、夕日のまぶしさがやけに目にしみた。 山の向こうに落ちていく、茜色の夕日。


 東校舎の教室に、電灯がひとつふたつ、つきはじめる。 力尽きて沈んで行く太陽に、追い打ちをかけるように。


 


 


 


 風下に立てば、継美のいることはすぐ分かる。


 僕は図書館の入口の近くで立ち止まって、風の匂いをかいだ。 微かに匂う、油絵の具のあの独特の匂い。


 校門の横の図書館裏の林の中に、椅子とキャンバスを持ち出して絵を描いている継美の姿が見える。


 僕はゆっくりと、乾燥した落葉を踏みつけながら継美の方に近づいた。 林の中には、夕日が木々の長い影を投げかけている。 オレンジがかった灰色の影。


 そっと、継美の後ろに立つ。


 普通の人ならここまで近づけばすぐに気が付くところだけれど、何かに夢中になっているときの継美は絶対に気がつかない。 ひたすらに絵筆を動かし続けている。


 そんな継美を見ていると邪魔するのが悪いようで、声をかけそびれてしまう。


 代わりに、僕は後ろから継美の描いている絵をじっと見つめた。


 何かをスケッチしているらしかったが、僕にはよく分からなかった。 鮮やかな色使いで、何かの織物か、派手な花のようにも思えた。 でも、継美の視線を追いかけてみてもそこにはモノクロームの冬の寂しい景色だけ。


 しばらくそのまま継美の描きかけの絵に見入っていたら、突然背後が騒々しい雰囲気になった。



 「おーい、掛須、なにやってる。 そんなとこで逢引きしてるんじゃない」



 僕は目を覆った。 目白の声だ。 後ろを振り返ると、飛鳥と目白が息を白くしながら林の中を駆けてきた。 それで気が付いたが、いつの間にか自分の息まで白くなっている。



 「鍵しめてきたわよ。 あ、継美ってば、まだ帰る準備できてないの」



 飛鳥の声に継美は驚いたように振り返って、僕がすぐ背後に立っているのに気が付いて、僕を、いや、正確に言えば僕の目をじっと見つめた。 僕は戸惑って、あわてて目をそらす。



 「どうしたのよ、継美ぃ。 まだ帰らないつもり?」



 そう言う飛鳥に継美はきょとんとしたように目を丸くした。



 「え? みんな、帰るの?」


 「だって、掛須くんが呼びに来てるでしょ」


 「いま気が付いたのよ。 掛須くんが後ろにいたこと」



 三人の視線がいっせいに僕に注がれる。



 「掛須。おまえまさか、後ろから…」


 「ちっ、ちがうっっ! 誤解だっっ!」


 「どーせ掛須くんのことだから、その辺でぼーっとしてたんでしょ」


 「なるほど。 掛須はとろいからな」



 腕を組んて納得する目白。 まあ、自分がとろくて、ときどきぼんやりしているっていうのは認めるけど。



 「じゃ、みんな帰るのね。 ちょっと待ってて。 これ美術室に置いてくるから」


 「急ぐのよお、継美」



 重そうに椅子とキャンバスを抱えて、継美の後ろ姿が南校舎の昇降口に消えていく。


 足元の枯葉をがさがさ踏みつけていた目白が、ふとつぶやいた。



 「桜か。珍しいな」


 「え? 何が」



 聞き返す僕に顔をしかめる目白。



 「何って、継美の絵だ。 掛須、見てたんじゃなかったのか」


 「なに、あれって桜の絵なわけ?」


 「ほんとにとろいわね、掛須くんって」



 たしかに、そう言われてみれば桜の絵だった。 何本もの大きな桜の木に、桜が満開になっている絵。



 「でも、それがどうして珍しいんだい」



 僕が聞くと、目白は絶望的な顔つきになって、胸の前で十字を切った。



 「あのなぁ・・・・継美は今までそこらへんの石ころとか、雑草とか、地味なモチーフしか選ばなかっただろう。 桜なんて派手なものは描いたことはないはずだ」


 「ふーん、そうだったかな」


 「どーして桜なのかしらね。 まだ桜なんて咲いていないのに」


 「そこまでは、俺にもわからん。 継美は無口だからな」


 「 ―― 」



 僕はさっきまで継美がいた場所に目を向けた。 桜の花なんてまるで気配さえもないのに、何で継美はこんなところで満開の桜の絵を描いていたんだろう。 しかも、普段は描かない、華やかな桜の絵を。



 「あ、継美きたわよ。 行こ、行こ」



 飛鳥の声で僕ははっと我にかえった。 いつの間にかあたりは真っ暗になっていて、昼間はあることさえ気が付かない外灯の光が、やけに暖かく感じられてくる。


 


 


 


 校門に続く、外灯に照らされた桜の木の下を僕たちは歩き始めた。


 ときどき通る自動車のヘッドライトが、灰色の桜の幹を黄色に染めていく。 一瞬だけ。



 「まだ、桜のつぼみはついていないのかな」


 「まだついてるわけがないだろう。 あと一か月はかかると思っていい」



 僕の言ったことにいちいち気取って返答する目白。 嫌味な奴。



 「ただ、言ってみただけだよ」


 「まあ、そう自己弁護するな。 抜けたところのある人間は愛されるんだ」


 「それって、ずいぶんでない」



 僕たちの横を、ディーゼルエンジンの音を響かせてバスが走り抜けて行く。 桜の木をかすめるように。



 「私たちの入学式の時は、ここの桜って満開だったわよね。なつかしいなあ」



 飛鳥が感慨深げに、桜の木を見上げながら言った。



 「自分たちの入学式でなくても、毎年4月には桜は咲く」



 茶化した目白の頭を、飛鳥がかばんでひっぱたく。



 「僕たち4人が出会ったのは、1年の時同じクラスで席が隣同士だったからだっけ」


 「そうそう。 それで2年の時に、4人だけでおべんとが食べられる場所がほしい、っていって、文芸部なんてでっち上げて、体育館の一階の部室もらっちゃったのよね」


 「文芸部創設を生徒会に交渉したのは、この俺だ。 これで諸君は俺に頭があがらん」


 「なに偉そうにいばってんのよ。 それだけでしょ」


 「新入生勧誘を全然しなかったときにはさすがに生徒会からにらまれたね、文芸部部長」


 「うるさい、掛須も共犯だぞ」


 「でも、文化祭の時に文集がたった5冊しか売れなかったからっていって、腹いせに後夜祭のキャンプファイヤーに売れ残りの文集と一緒に爆竹3箱放り込んだのは誰だったっけ。 目白だったっていうもっぱらの噂だけど」


 「あ、そーよっ! あのときは言いわけが大変だったんだからね、目白くん!」


 「いにしえの語りべだ。 信憑性はない」


 「みんなして部室のストーブをゴミ焼き器代わりにするもんだから、ストーブのすすがものすごくて、顧問の先生に文句たらたら言われたこともあったし」


 「そうそう」


 「暇なときはほとんど部室ですごしてたから、思い出すこともいっぱいあるよ」


 「部室の壁の落書き、天井につけた足跡とか? だれよぉ、天井に足跡なんかつけたのはぁ!」


 「僕じゃない誰かさんだよ」


 「まるで俺がやったような言い方はよしてくれ。 飛鳥だろ」


 「どーして私がそんなことするのよっ!」


 「まあ、とにかく、いろいろあったね」


 「ほんと」


 「なんだかんだ言って、もう卒業まで2か月足らずか。 早いもんだな」



 僕たちは言うことだけ言ってしまうと、なんとなくそれぞれ物思いに沈んだように口をつぐんだ。


 吐く息だけが白く凍って、桜の木の上の夜空に消えていく。


 


 ふいに、目白が思い付いたように言った。



 「そういえば、俺たちが卒業した後、あの体育館は取り壊されるらしいな」


 「えーっ、なんだい、それ」



 いきなり突拍子もないことを言われて、僕は自分の耳を疑った。



 「うそじゃないの」


 「いや、かなり前から決まっていたことらしい。 俺は昨日初めて聞いたんだが」


 「じ、じゃ、あの部室も取り壊されるの?」



 飛鳥が半分どもる。



 「まあ、二階だけ取り壊して一階は残す、なんてケースの方が珍しいんじゃないか」


 「そんな、それって」



 あんまり、突然すぎるよ。 薮から棒に。つまり、あの部室がなくなってしまうってことじゃないか。 僕たちが卒業するのを待ちかまえていたように。



 「・・・・なんだか、嫌な感じよねぇ。 私たちが卒業したらすぐに取り壊すなんて」


 「昭和30年代築だからな。 30年も元気な高校生に使われてれば、ガタもくるさ」


 「でもねえ、たくさんの人の思い出がいっぱい詰まってる建物を、そんなに簡単に壊すなんて、わけわかんないわよお。 私たちの思い出も詰まってるのよっ」


 「 ── わたし、知ってた。 体育館壊すこと」


 唐突に後ろから声が聞こえたので、僕と飛鳥と目白はびっくりして振り向いた。


 継美が無表情のまま僕たちをじっと見ている。 継美はいつも、いることさえ忘れてしまうくらい僕たちの中では目立たないけれど、妙に言葉に重みがある。



 「 ── 3か月くらい前に聞いたわ。 なくなってしまう、って」


 「継美ってば、そーゆーことはもっと早く言ってくれなきゃだめよ。 卒業を間近にして聞くと、ショック大きいもん」



 飛鳥がこころなしか声を落としていうと、継美は立ち止まった。



 「だって、わたしには関係ないわ。わたし、卒業しないから」


 「え」



 僕たちは一瞬ぎくりとした。 継美は冗談言うような女の子じゃない。



 「ちょっとっ!どーしちゃったのっ、継美っ、しっかりしてっ!」


 「おいおい、悪い冗談よせよ。 もうO美大進学も決まってるんだろが」



 あわてる目白と飛鳥に、継美はさらに言う。



 「卒業しないで、ずっとこの高校にいるの。 ここで絵を描いて過ごすの」



 絶句。


 すぐに、目白がにやりと笑った。



 「・・・・ははーん、さては幽体分離だな」



 継美はそれには答えずに、桜の枝を見上げた。 でも、目の焦点が合ってない。 どこかをさまよっているような視線。



 「厭世的だが、面白いな。やってみろよ」


 「ちょっと、いい加減にしなさいよっ、目白くん!」



 飛鳥が目白の腕をぐい、と引っ張る。 よろける目白。



 「継美もつまんないこと考えてるんじゃないのっ! そうやって落ち込みそうになったときはね、そういうときはね、名取商店のスペシャルたこ焼き食べるのよっ!元気出るからっ!」


 「幽体分離とたこ焼きか。 シュールな組合せだ」


 「そういえば、飛鳥っていつも元気いっぱいだね」



 僕が皮肉ったように言うと、気づいてか気づかずにか、飛鳥は得意げな顔になる。



 「人生なんて元気に生きなきゃ! さっ、目白くんと掛須くん、100円ずつ出して! 継美に300円16個入りのスペシャルたこ焼きおごってあげるんだからねっ!」


 「うげ」


 「文句言わないっ!」


 「お許しくだせえ、お代官さま! 家には病気のおっかあがおるだ!」


 「許しませんっ!」



 僕たちのやりとりを黙視していた継美が、ぽつりと小さな声を出す。



 「いいよ、わたし。 みんなで名取商店行きなよ。 ・・・・わたし、先に帰る」



 そう言うと、継美はあっけに取られている僕たちを後にして、小走りで急な坂道を下りて行った。 その後ろ姿が、曲がり道で見えなくなる。


 どこからともなく、電車の警笛の音。



 「・・・・俺はときどき、継美が恐くなるよ」


 「うん」


 「だいじょーぶかしらね、継美。 ・・・・何だか気そがれちゃったわね。 も一度気取り直して、いこいこ、スペシャルたこ焼き」


 「・・・・飛鳥もめげないね」


 「なにいってんのよ。 継美におごるはずだったたこ焼き、わたしにおごってね」


 「げっ、なんだそりゃ」


 「いーじゃないのよ。 どうせ捨てるはずだった100円よ。 わたしに捨てて!」


 「うっ、・・・・さよなら、100円さん」


 「フェミニストの自分が恨めしい。 ・・・よおし、行くか!」


 「そうこなくっちゃねー」


 飛鳥の元気さに引きずられて、僕たちは道を横に曲がって、名取商店への坂道を下り始めた。 これが受験まであと一か月の高校生の姿とは、とても思えない。


 


 


 桜並木がとぎれる処で、継美の描いていた桜の絵が僕の頭をかすめたけれど、飛鳥と目白の会話に打ち消されて、すぐに心の隅に追いやられていった。


 


 


<FIN OF PART Ⅰ : TO BE CONTINUED TO PART  Ⅱ


 


 


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丘の上の喫茶店のお茶会話
うわーい
高校時代に引き戻されちゃいましたよー、お見事☆

しかしあれですね、自分の学生時代を振り返ると脳内別人になる感じがしませんか??
高校時代かなり破天荒というか、独特の性格だったので、『おいっ戻ってくるな!』とかなり少々焦りましたが・・・

続きが楽しみです♪
【2007/02/11 06:37】 URL | 虎子『離婚・デトックス!』 #Xk/vyiCg [ 編集]

虎子さん
こんばんはー。

いや、本文を入力しながら、悶絶していたマスターですv-406
極力、原文のままv-295にしてあります。 なんて恥さらしな…

しかし、主人公の名前は、掛須…って、もう、このときから、カケスのニックネームで通っていたんですね。 いまさらながら驚きですv-405
あっ、ちなみにフィクションですから。 フィクションv-356

> 高校時代かなり破天荒というか、独特の性格だったので

v-391v-356 ど、どんな…?(爆)
えーとですね、きっと、ホラ、アレですよ、学園に旋風を巻き起こすような強烈少女v-308v-513v-323
ラベンダーの香りを嗅ぐと、霊能力でタイムトラベルしちゃうとか…v-242
ヨーヨー使いの名人で、学園にはびこる悪をバッタバタとかv-26
100mを3.2秒で走っちゃうとかv-29


【2007/02/11 22:53】 URL | カケス #Hte2UAXI [ 編集]

出足が遅れました・・・・
なんか、調子がここの所よろしくなくて、2回に分けて読もうと・・・・

なんかいいですねぇ~

鳥の名前もしゃれてますよ^^

私は中学出てすぐ就職でしたから高校のイメージは湧きませんが、この頃に戻りたい気分になります。いろいろ合って、年齢相応の悩みと言うか迷いと言うか出来ませんでしたからして見たいといつも思ってました。

勉強は大嫌いでしたが学校生活は好きだったし、10代の人並みの悩みが欲しかった。

今はどうって事ないんですが・・・・

カケスさんはえらくロマンチストですね~

憧れてしまいます^^

早く次が見たいです。

本にしてみては?

短編集のような。

少女向けで、うちの子に良いかも^^
【2007/02/16 20:19】 URL | okannno-nikki #- [ 編集]

okannno-nikkiさん
こんにちはー。

お体の調子は、だいじょうぶですか?
最近、風邪が流行っていますので…マスターも、まだ全快ではないですv-100
会社では、下の階の部署で、インフルエンザが発生したとかで、さらに
ビクビク状態ですv-74

マスターは、中学のときは、生徒が一気に増えたときで、年度の途中でプレハブを建てて教室して教室の引越しをしたりとか、近所に新しく中学ができて、通っていたマンモス中学
から分離、それまでのクラスメートもばらばらになったりして、落ち着かない日々でした。
新しく通い始めた中学も、半分工事中v-449みたいな感じで、あまりおもむきが
なかったですね…ちょっと残念v-461

でも、けっこう、楽しかったですよv-407朝のホームルーム前に、教室のテレビv-492で世界名作劇場のアニメを勝手にみんなで見ていたりとか(「りすのバナー」でした)。
担任の先生も、教室に入ってきて、一緒に見ていたりとかv-407
【2007/02/17 12:11】 URL | カケス #Hte2UAXI [ 編集]

やっとⅠ読了ε=(^^;
突っ込みいいですか?(歯くいしばれ~)e-277

イーゼル立てないとキャンバスの置き場がありませんぜ(笑)


高校生の頃は何やってたかなあ~…スタタスt・......v-106


【2007/03/01 12:19】 URL | モラ・バスター #- [ 編集]

暗黒巫女さん
こんばんは~。

v-487、あれ、イーゼル、書いてなかったですかv-70
実は、木の枝からピアノ線でキャンバスが吊るしてある…わけないかv-389
ま、まあ、気にしない、気にしない。i-206 i-206
昔のお話ですから。スルー、スルーe-276
いやあ…昔のモノって、言い訳しないですむからラクチンだ~v-411
(手抜きマスターばればれv-356

>高校生の頃は何やってたかなあ~…スタスタスt・......v-106

だから皆さん思春期時代のことになると何故逃げる?v-319
一番気恥ずかしい時期だからでしょうかv-16
いいです、旦那様がご来店のときにこっそり聞くからv-391(嘘)
【2007/03/01 22:59】 URL | カケス #Hte2UAXI [ 編集]

バナー、きみは猫じゃな~い♪
>マスターへ

残念ながら、私、高校時代は、共学でございました。
でも、男子とは、1年に数回、話す程度だったので
ほとんど女子校状態ですね(笑)。

高校3年間、いつも学校帰り、仲良し3人組で、
知らないマンションの屋上に行き、
日が暮れて、あたりが暗くなるまで、
毎日、いろんな事をしゃべりしました。
その屋上から見える夕焼けがまたキレイで・・・。

土曜日はお昼持参で、屋上に行き、
青空の下で、歌とか歌っちゃたりして(笑)。

マンションの住人さん、
立ち入り禁止の屋上に入ってごめんなさいm(_ _)m。

巫女さまの「歯くいしばれ~」に
思わず爆笑してしまいました。

【2007/03/05 00:26】 URL | あおい。 #- [ 編集]


心が疲れたので・・やっと一話を読んでみました。

冬のソナタにように
情景が浮んで来ました。

鳥の名前いいですね♪
よしこのまま2羽×
2話も読んじゃおうv-87


【2007/03/05 17:08】 URL | 本日のお客さま #- [ 編集]


あれ?名無しでもコメントupするんんだ!! ピックリ~。
失礼しましたm(__)m
【2007/03/05 17:10】 URL | Sally Garden #- [ 編集]

あおいさん
こんばんはーv-229

うーん、あおいさん共学でしたか、残念、ハズレ…v-389
そういえば、師匠v-206が女子高出身と聞いて、腰を抜かしましたよ…v-476(嘘)

あおいさんも、青春を謳歌していたのですね。
なんといいますか…この頃って、いちばん、感受性が高まる年齢?でしょうか。

そういえば、映画v-492を見て感動して、数日間、食事がまともにのどを通らなかった…v-366なんてことも、この頃にはありがちでした。
友達に聞いてみたら、みんなそうだそうで…。
(というか、マスターの周囲に、一時期、芸術系(特に音楽)?の人間が多かった時が…)

>「バナー、きみは猫じゃな~い♪」

あ、ご存知でしたかv-411
で、あおいさんの愛猫「きみちゃん」v-283は、猫じゃなかったのですか?(お約束のジョーク)
【2007/03/05 22:14】 URL | カケス #Hte2UAXI [ 編集]

本日のお客さまへ
はじめまして(爆笑)v-369

もう、ずっと昔の妄想話なので、読むのも大変なふつつかものですがv-394
末永くよろしくお願いいたします。

ハッキリ…いまのマスターの書き方と、言葉のリズムが違いますね(懐かしい…)。
もう、ブログに移しながら、句読点をぜんぶ打ち直したい欲望に負けそうでe-268

なにしろ、ひとつの記事が長いので、ご迷惑をおかけします。
この話、来週で終わりますので、どうぞご堪忍を…v-436
【2007/03/05 22:21】 URL | カケス #Hte2UAXI [ 編集]

Sally Gardenさん
こんばんはーv-272

いらっしゃいませ…って、あれ、本日のお客さまは、Sally Gardenさんでしたかe-468

そうなのです、お名前はなくても、ご来店された大切なお客様v-273
おもてなしいたしますよv-274

で、もちろん、お代を頂いてv-61と…(笑)
【2007/03/05 22:31】 URL | カケス #Hte2UAXI [ 編集]



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