過ぎ行く風景
バツイチカケスのゆるゆる人生 BGMも交えて のんびりゆったり歩きます
いらっしゃいませ

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サンタ・クロースは

Santa Land















 目覚ましを止めた僕は、目をこすりながら起き上がり、カーテンを開けた。



 窓の向こう、遠くに見える山の峰々が、澄んだ空気に、くっきりと映える。


 


 僕は、冷え切った手をこすりながら、カレンダーのページを破り取った。


 11月のカレンダーの絵には、背景の山の天辺に、雪が積もっている。



 ―― そうか、もう、そんな時期になったのか。



 朝のあわただしい時間の中、僕は、少しのあいだ、その絵に見入っていた。


 


 


 


 会社の各社員のパソコンには、互いに、短いメッセージをやり取りできるソフトが入っている。


 本来は、電話の伝言メモなどの業務以外の使用は、禁止されているのだが、遠い部署とも、簡単にやり取りできるので、便乗して、他の用件で使わせてもらうこともある。


 僕は、自分の仕事が、一段落するのを見計らって、メッセージを打った。


 送り先は、僕の異動前の部署の、事務担当、荒木さんだ。




 『ご無沙汰してます。 ちょっと、教えてもらえませんか』


 


 荒木さんからは、すぐに、返事が来た。



 『誰かと思ったぜ。 最近、顔見せねえから、忘れちまったよ』



 がらっぱちの返事を送ってきた荒木さんは、もうすぐ定年の、かなり大柄な女性である。


 学生時代は、バレーボールに明け暮れた体育会系の女傑で、その昔、新人相手にうっかり本気でスパイクを打ち込んで、レシーブに入った新人の指の骨を砕いてしまった経歴を持つ。
 会社に入ってからは、無口で物静かな同期の男性と電撃結婚をして、周囲を驚かせたらしい。



 『なにか、儲け話でもあったか?』



 たたみかけてくるメッセージに、僕は、返事を打ち返した。



 『情報を、お持ちではないかと』


 『なんでぇ。 情報料、高けえぞ』


 『いいから教えてください。―― 渡辺さんの、ご家族のことなんですが』


 『渡辺さんの?』



 返事が返ってくるまでに、しばらくの、間があいた。



 『―― 渡辺さん、カケスさんの前の上司だったねぇ。』


 『ええ。 それで、もしかして、今、転居してませんか?』


 『あ、―― ははあ、例のやつ、今年もやるのか?』


 『そのつもりです』


 『そっか。 待ってな。 住所ならわかる。 この前、連絡があった。 ―― 引越し、してんぞ』



 ―― やはり、そうか。


 僕は、パソコンのキーボードから手を離して、椅子の背に、もたれかかった。



 しばらくして、返事があった。



 『住所、B県だな。 C市D町、番地は123-4だ。 個人情報、洩らしちまったぜ。 取扱注意だ』


 『わかりました。 助かります。 ありがとうございました』


 『ちっ、口だけの感謝かよ。 最近、ちゃんこ鍋、食いてえんだよな』



 僕は、それを無視して、新しいメッセージを送った。



 『ところで、もう一つ、教えて欲しいんですが』


 『その先は、言・う・な・よ。 渡辺さんの奥さんの姓が、いま、どうなってるか、だろ』



 僕は、軽く、肩をすくめた。 がらっぱちのくせに、荒木さんは、察しがいい。



 『その通りです』


 『知りたきゃ、教えてやるよ。 ―― 姓は、変わってない。 渡辺さんのまま、だ 』


 


 


 


 渡辺さんは、僕がいまの部署に異動になる前の、僕の上司だった。


 会社の柔道部に所属していて、堂々とした、体躯の持ち主だった。


 昼休みになると、柔道着に着替え、大声をはりあげて、投げ合いをしている姿を、よく見かけた。


 そんな体格からは想像がつかなかったが、性格は温和で、常に、周囲に気を配っていた。



 ―― カケス、いつまで仕事をしてるんだ。 さっさと帰れ。



 仕事の激務のなかで、僕は、よく、そんな言葉をかけられた。



 ―― 家庭を大事にしろよ。 奥さんを大切にしろ。



 まるで、口癖のように、渡辺さんは、周囲に向かって、何度も繰り返していた。



 まだ、僕の家庭が崩れる、ずっと前のことだった。


 まさか本当に、自分がそんなことになるとは、思いもしなかった僕は、渡辺さんが、なぜ口を酸っぱくして、こんなことを言うのか、首をかしげていた。


 


 


 そんなとき、隣の部署から、思いがけない話を耳にした。



 ―― いや、渡辺さん、実は、離婚してるんだよ。 ずいぶん前に。


 ―― えっ、所帯持ちじゃ、なかったんですか。


 ―― 家庭で、いろいろ、あったんだろうな。 詳しいことは、わからないが。



 毎日、昼休みに柔道着で汗を流す、健康で温和な姿からは、そんな過去は、見いだすことはできなかった。


 


 


 そんなある日、渡辺さんが良縁に恵まれたという話で、職場は盛り上がった。


 朝礼で、結婚を紹介された渡辺さんは、頭をかきながら、赤くなった顔で、



 ―― 恥ずかしながら。



 と、口ごもっていた。


 誰も、再婚であることなど話題にしなかったが、渡辺さんは、披露宴を固辞して、親族だけの、ささやかな結婚式をあげた。


 少しして、僕のもとに、新郎新婦の記念写真が載った、結婚の挨拶状が届いた。



 ちょと恥ずかしげに首をかしげた、幸せそうな奥さんが、渡辺さんの横に寄り添っていた。


 


 


 再婚してから、渡辺さんの堂々とした体躯に、拍車がかかった。


 腹回りが大きくなる渡辺さんを、周囲は、幸せ太りだと、はやし立てた。



 ―― 子供を待ちきれなくて、自分ではらんじゃったんですか?



 渡辺さんは、照れくさそうに、答えた。



 ―― いや、俺の出る幕はないよ。 ―― もう、子供は、奥さんの中にいるんだ。



 周囲が、一気に、わいた。



 ―― まいったなあ、家庭生活でも一本勝ちですか。



 渡辺さんは、苦笑いしながら、頭をかいていた。


 


 


 日が経つにつれて、渡辺さんの堂々たる胴回りは、ますます、大きくなってきた。


 ある日、渡辺さんが、健康診断の検査結果の医師面談から、しょげた顔で帰ってきた。



 ―― 太りすぎで、糖尿病と、その合併症の疑いがあるんだと、さ。


 ―― 大丈夫ですか。 毎日、昼休みに、運動もしているのに、不思議ですね。


 ―― 精密検査によっては、しばらく入院かもしれない、と、医者に脅されたよ。
     もし、入院したら、仕事の負担がカケスにかかってしまうが、すまないな。


 ―― いえ、体が第一ですから。


 ―― まあ、こっちは、鍛えた体だ。 大したことはないと思うけどな。
     家庭を壊すような仕事はするなよ。 家庭は大事にしろ。 それだけは、頼んだぞ。


 ―― はい。 約束します。



 ほどなく、渡辺さんは、入院することになった。


 時を同じくして、僕は、別の部署に異動の内示を受けた。


 


 


 それから間もなくして、僕には、離婚騒動が持ち上がった。


 渡辺さんを見舞いに行く余裕などなく、たまに、思いついたように、前の部署の同僚に、渡辺さんの様子を聞くくらいが精一杯だった。


 渡辺さんは、医者の厳しい食事管理で、かなり痩せて、スマートになったらしい、という話を聞いた。 


 


 


 そんなある日、職場に、訃報の回覧が回された。


 僕は、その回覧を見て、目を疑った。


 渡辺さんの名前が、はっきりと、そこに記されていた。


 僕は、衝動的に、前の部署に電話をかけていた。



 ―― 糖尿病じゃ、なかったんですか。


 ―― いや、悪性の腫瘍だった。 ご家族は、伏せていたんだが。
     発見したときには、打つ手が無かったそうだ。


 ―― そんな。



 一緒に通夜へ行かないか、との誘いを断って、僕は、ひとりで通夜に向かった。


 


 


 通夜の会場は、雨上がりの霧に包まれて、無言だった。


 黒い額縁の中の写真の、渡辺さんの笑顔は、僕の知っている時のままだった。


 遺族の席には、泣きじゃくる奥さんと、親戚に抱っこされている、生まれたばかりの愛娘がいた。



 ―― 家庭は、大事にしろよ。 それだけは、頼んだぞ。



 そんな渡辺さんの言葉が、僕の心を、かき乱した。


 結局、渡辺さんも、僕も、その約束を、守れなかったのだ。


 


 


 11月のカレンダーをめくるころ、やっと、長い喪があけた。


 僕は、『サンタからの手紙』 の、申し込みをはじめた。


 申し込むと、フィンランドから、エアメールで、子供宛に、クリスマスカードが送られてくるものだ。


 送り主は、サンタ、とだけあって、だれが申し込みをしたかは、わからない仕組みになっている。


 届け先は、渡辺さんの愛娘さん。


 渡辺さんの奥さんには、びっくりして怪しんだりしないよう、がらっぱちの事務の荒木さんから、事前に根回しをしてもらった。


 カードには、自由に文章を添えられるスペースがある。


 さんざん悩んだあげく、僕は、こんな一行を、記入しておいた。


  


 ―― パパは てんごくで サンタクロースに なりました。 おおいそがしです ――


 


  


 


 『―― まだ、奥さんは、渡辺さんの戸籍から、抜けてないよ。 気遣い無用だ』



 がらっぱちの荒木さんから、パソコンに返信されてきたメッセージに、僕は、思わず、ほっとした。



 『どうも。 今年も、そろそろ、「サンタからの手紙」 の、申し込み時期ですから』


 『さすがに、奥さんが今頃、再婚でもしてたら、そんなもの送りにくいもんなあ』



 僕は、荒木さんの返事に、思わず、苦笑いをした。



 『ええ。 その通りですよ』


 『―― 奥さんには、言っといてやるよ。 怪しいストーカーが、サンタメールを今年も送るから、ってな』


 『怪しいストーカー、だけ、余計です。 渡辺さんご夫人とは、話どころか、挨拶したこともないですが。 匿名希望、とでも、しておいてください』


 『もっと怪しいじゃねえか、あはは。 ところで、カケスさんのポケットマネーで送るんだろ。 いつまで続けんだ?』



 僕は、少し考えてから、返事を打った。



 『―― 渡辺さんの愛娘ちゃんがサンタを信じなくなるか、奥さんが、誰かいい人と再婚して、
      新しいサンタクロースが、クリスマス・プレゼントを届けるようになるまでは。 』


 


 荒木さんからの返事は、それっきり、途切れた。


 


  


 ふと、がらっぱちの荒木さんが、パソコンの向こうで、涙ぐんでいるような気がした。


 


 


 


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