過ぎ行く風景
バツイチカケスのゆるゆる人生 BGMも交えて のんびりゆったり歩きます
いらっしゃいませ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。



プロフィール

カケス

マスター : カケス
5年前、新しい人生の
スタートを切りました。
今はゆっくりと心身を
癒している最中。
近くに温泉が噴出したので、
週末を楽しんでいます。





周辺散策まっぷ


ameba lanking banner

▼ こんな男 要らねぇ !!
箱ミネコの離婚日記(暴走)
こんなオトコ要らねぇ~ミネコの「モラハラ」リコン日記
元夫から「モラハラ」を受けた
漫画家の筆者がやり場のない
怒りを爆発、ペン先を潰しつつ
執筆した著作、ついにマガジン
ハウスより、電撃発売が決定。
早くも大増刷準備か?

▼ カッパの南国別館
▼ 離婚・デトックス!
▼モラル・ハラスメント
 被 害 者 同 盟

▼95%モラハラ夫!
▼シングルマザーのゆううつ
▼ にゃりんたが行く
▼ 地上12,000mmの沃地
|電柱|`∇´)ノ





最近のお茶会話



コース別 メニュー



本日のおすすめ



月別アーカイブ



屋根裏部屋

全タイトルを表示



マスターへご注文

メールはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:



記事検索

指定言葉を含む記事を表示



お気に入り

Master of Coffeehouse Wolds
Found Gadgetries as . . .


foo bath bookstand
Relaxing Bath BookStand


just an old fashioned coffeemaker
old Fashioned Coffeemaker


One day, a little Chick visited Coffeehouse Wolds and....
One day, a Chick visited my...



piano player
Karaoke Network Comunity


家頁画廊~Web素材集~
Funny Style Illustration



スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

咲きに咲くらん(3)

 こんにちは、カケスです。


 このお話は、僕が10代のころに書いたもので、5話シリーズの3話目です。


 詳しいことは、前書きの記事があります155ので、どうぞ、まずは、こちらをご参照ください。


 


157桜の樹に寄せて


 


 1、2話目は、こちらになります155


 


157咲きに咲くらん(Ⅰ)


157咲きに咲くらん(Ⅱ)


 


 なにしろ、はるか昔のものですので、細かいところはご容赦を ――


  あ、それから、これはフィクションですので、現実のマスターと混同しないように…(爆)






 





 


 



 


 


 最後の授業も終わり、週一回の登校日という頼りない形だけを残して高校から半分追い出された僕たちは、本格的に入試シーズンに突入した。


 もうO美大に合格してしまった継美を除いて、僕と飛鳥と目白は入試で忙しくなって、週一回の登校日にさえも来られない日がほとんどだった。 だから、今日のように三人が珍しく顔をそろえた日は、なんとなくほっとするような日なのだけれど。


 空は厚い雲に覆われて、今にも泣きだしそうだ。


 


 



 「うー、腰がいたい。俺もそろそろ年だな」



 目白はちり取りを下に置くと、砂で真っ黒になった軍手を外して腰に手をあてた。



 「またそーやって理屈つけて、ゴミ拾いさぼろうとしないでよっ!」



 顔をうずめた赤いマフラーめくって、飛鳥が大声をあげた。声が寒さで震えてる。



 「だいたい、何で入試期間真っ最中の受験生がゴミ拾いなんかせねばならんのだ」


 「しょーがないでしょ、みんなやってるんだから」


 「しかしだな、こんなグラウンドの最果てでゴミ拾いなんかして、風邪でもひいたら、どうするつもりだ。 それで入試すべったら、高校を告発してやる」



 足元の砂を蹴飛ばす目白。 砂がぱっと散って、黒い地面が顔をのぞかせる。



 「ほんとに、すごい北風だね。 うー、さぶ」



 僕はマフラーをしっかりと巻き直した。


 いま僕たちがいるこのグラウンドの端は崖っぷちにあって、崖の下から北風がものすごい勢いで吹き上げてくる。



 「そういえば、この冬いちばんの冷え込みだとか天気予報で言ってたな」


 「いいからゴミ拾いやってよお! 終わんないでしょー」


 「ゴミ拾いの方がいい、と最初に言い出したのは飛鳥だぞ」


 「だってー、暗い教室の中でちまちま床のワックスがけなんかやってるより、広々としたグラウンドで楽しくゴミ拾いの方がいいじゃなーい」


 「この曇天が圧迫してくるグラウンドが解放的か」



 そう言って、目白は曇り空をあごで示した。 今にも押しつぶしてきそうな灰色の雲。



 「気持ちの問題よ! さー、がんばろーね、掛須くん!」


 「・・・・うん」


 「どーしたの、返事が暗いわね」


 「なんか、だんだん眠くなってきて」


 「寝ちゃだめっ! 眠ると凍死するよっ!」



 いきなり僕の頬を平手打ちにする飛鳥。 ・・・・恐い性格。


 また、ひときわ冷たい北風が吹いてきて、僕たちのマフラーの端をひるがえした。



 「ぐわぁぁーー」


 「うわー、死ぬ死ぬ」


 「は、・・・・早く終わらせて部室のストーブあたろっ!」



 顔にまつわりつく髪の毛を両手で払いながら、飛鳥が絶叫する。 髪に覆われた顔をもう少し青白くしたら、もろに怪談の世界だ。 だからその髪型はやめたほうがいいって前から言ってるのに。



 「それにしても継美はいいときに休んだな。俺も休むべきだった。一生の不覚」



 目白はかっこつけてそう言うと、ハナをすすり上げた。 さまになってない。



 「そんなこと言ってる間にやんなさいよ」


 「やむをえん。 やってやるか」


 「何いばってるのよっ!」


 「いいからさあ、早くやろうよ。 で、部室行こ」



 僕は横から口を出した。 止めないと、この二人はいつまででも漫才を続けてる。


 いつの間にかまわりでゴミ拾いをやっていた連中は終わってしまって、グラウンドに僕たち三人だけがぽつんと取り残されていた。 いつもこうだ。 だいたい、目白や飛鳥や継美と一緒にいると、必ずなにか一悶着起きてうまくいかない。 もっとも、それが面白くて、いつも四人が集まっているのだけれど。



 「また、掛須くんがぼーっとしてる!」


 「ほっとけ、ほっとけ。 掛須は生まれつきああなんだから」



 よけいなお世話だ。


 僕は軍手を外して、痛いくらいに冷たい耳に手を当てた。 もう、ほとんど感覚もなくなっていて、手で触れたことさえわからなくなっている。 十秒くらいしたらすぐに手が痛くなってきて、ぼくはあわててポケットに手を突っ込んだ。 北風がすぼめた肩の上を追い越していく。 追い越されると焦りを感じるのは、僕が受験生だからだろうか。


 グラウンドの片隅で、北風が小さな渦を巻いているのが見える。 まわりの小さなゴミを巻き込みながら、時折思いだしたように消え入りそうになると、また息を吹き返す。


 崖の下の雑木林は、こんな寒さにも一日中じっと耐えている。 北風に逆らわず、何も言わずに。 ・・・・言えないのか、言わないのか、わからないけれど。


 きっと、今年もまた去年と同じ春がやって来ることを信じて。


 


 


 


 目白は机の上に置いてあった予備校のパンフに灯油をしみこませると、ストーブの中に放り込んで、マッチをすった。 目白の手元が、一瞬赤く染まる。



 「目白くん、早く火つけて、早く! 私の手、凍ってる!」


 「そうあわてるな。いまつける」



 真っ黒なストーブを上からのぞき込んでいた目白は、マッチの火が安定するのを待って、ストーブの中に落とした。


 僕は机の前から椅子を引きずってくると、ストーブの前に陣取った。 飛鳥もそれを見て、あわてたようにがたがたと椅子を持ってきた。 椅子取り合戦でもしてるみたいに。


 目白はしばらくストーブを上からのぞき込んでいたが、いきなり軽く舌打ちすると、マッチの箱を開けて新しいマッチを取り出した。



 「何やってるのよお。 一発でつけてくれなきゃー、寒いんだからあ」



 硬直した腕をふりまわす飛鳥。



 「灯油が出過ぎたらしい」


 「いっつもその言い訳してるじゃないの!」


 「何を言うか。 ストーブ点火には熟練した高度なテクニックが必要なんだ。 この俺でさえ手間取るんだからな。 ・・・・お、ついた」



 すすけたストーブの覗き窓が、オレンジ色に光り出す。 目白はストーブのふたを二本の指でつまむと、がしゃんとストーブの上におっことした。


 飛鳥が待ちきれないように、ストーブの送風機のスイッチを入れて、ダイヤルを最強に合わせる。 軽い送風機の音。


 僕たちはストーブの前にすわり込んで、無言のままストーブが温まるのを待った。


 


 一階にある部室は、陽の当たらない日は特に冷え込む。


 ほんとうならこんな日は部室には近寄りたくないのだけれど、教室のストーブはもう灯油切れでつかない。 春休みに入る前に、ストーブの灯油タンクを空にするためらしい。


 僕はふと気がついて、目の前のストーブの灯油計をのぞき込んだ。


 薄汚れた針が、満タンを示している。


 「なんでこのストーブ、灯油いっぱいなのかな。 ・・・・1か月前に部室の灯油は差し止めじゃなかったっけ」


 「ああ、それか」



 目白が得意げな顔になった。 いやな予感。



 「俺が先週の登校日の朝早く、職員室用の灯油を失敬してきた。 感謝しろ」


 「・・・・そんなことじゃないかと思った」


 「ち、ちょっと、目白くんっ! 恐いことしないでよねっ!」



 飛鳥が思わず身を乗り出して仰天した。 椅子がひっくり返りそうになる。


 「職員室はストーブをたき過ぎる傾向があるから、ちょうどいいだろう」


 「そーいう問題じゃないでしょぉ」


 「省資源に貢献してると思えば、良心も痛まん」


 「しょーがないわねー」



 飛鳥はあきれかえって、ひものついた真っ赤なミトンをぐるぐる振り回した。


 ストーブの覗き窓が、いよいよ明るく輝き出す。



 「ようやく温まってきたみたいだな」


 「うん、ぬくい」


 「天国ね。 あー、幸せ。 いい天気の日にひなたぼっこしてるみたい」


 「飛鳥はいつも脳天気だろうが」


 「なによっ、それどういう意味」



 また始まった。つき合いきれない。 僕はストーブごしに、窓の外を眺めた。


 ストーブで温まった空気が、外の景色を揺らしている。 少し向こうの林の中に、灰色の図書館の壁。


 毎日高校に通っているときは何も感じなかったのだけれど、少し見ないでいると、いつの間にか知らない風景になってしまっている。 どんなに長い年月、毎日飽きるほど眺めていても、たったの一週間見なかっただけで風景は僕を忘れ去ってしまう。 僕みたいな人間ひとりをいつまでも覚えてはいられないほど、季節のうつろいに合わせてその装いを変えるのに忙しいのだろうか。



 このまま卒業して、ずっとこの風景を見ずにいたら。



 僕は一瞬どきっとした。 僕たちがここで高校時代を過ごしたことの痕跡だけではなくて、その事実さえも消え去ってしまうような気がして。


 


 陰調の風景に、いつしか場違いなくらい白いものが空からちらつきはじめた。



 「・・・・あ、雪だ」



 僕がもらすと、目白と飛鳥がいがみ合いをやめて振り返った。



 「あー、ほんとねー」


 「積もりそうだな」



 僕たちは、そのまましばらく雪をながめた。


 最初ためらいがちに降っていた雪は、みるみるうちに勢いを増していって、雑草や木の枝をうっすらと白く染めはじめる。



 「継美が見たら、喜ぶわよー、きっと」


 「こういう景色が大好きだったからな、継美は」


 「何で今日継美休んでるのかな」


 「風邪ひいちゃったのよ」



 飛鳥はいそがしく自分の額に手を当てて、熱を調べるようなしぐさをしてみせる。



 「あの子ったら毎日学校に来て一日中林の中で桜の絵なんか描いてるでしょ。 風邪ひくからほどほどにしときなさいって言ったのにきかないのよ。 ずーっと心配してたんだけど、とうとうダウンしちゃったのね。 ・・・・ちょっと、何笑ってんのよ、掛須くん!」


 飛鳥が口をへの字に曲げて僕の方を見る。


 「あ、ごめん。 ・・・・受験生の飛鳥が、もう受験のすんだ継美のこと心配してるのが、おかしくて」


 「あのねー」


 「お話の最中に誠に申し訳ないんだが」



 いきなり目白が間のびした口調で僕たちの会話をさえぎった。



 「俺たちグラウンドからまっすぐこの部室に来たけど、ゴミ拾い終わったこと誰か先生に報告したか」



 うっ。 ・・・・二人の顔の血の気がさっと引く音。



 「あーあ、大ひんしゅく」


 「担任のポチ、怒ってるぞ、今ごろ。 早く行ってこいよ」


 「なんでー、目白くんが行くんじゃないのぉ」


 「何で俺なんだ」


 「文芸部部長としての誇りと責任において、でしょ! いつも言ってるじゃない」


 「・・・・それを言われるとつらいものがあるな」


 「さ、行ってらっしゃーい。 あえなく最期遂げたら、お墓には桜の花そなえたげる」


 「縁起でもないこと言わんでくれ。 ・・・・よし、行く。 行ってやる」


 「いばるほどのことじゃないでしょ」



 目白は名残惜しそうにストーブの前を立つと、壁にかけてあったコートを手にして、化けて出そうな恨めし顔を残してドアのノブをひねった。


 僕の後ろで、ドアがばたん、と閉まる。


 飛鳥はストーブの横に置いてあったやかんを両手で持ち上げると、いかにも重そうにストーブの上に置いた。 やかんの表面についていた水滴がストーブの上に落ちて、あっという間に音をたてて消える。 あっけないくらいに。


 僕はストーブの前に手をかざした。


 「・・・・どうして今日に限って、継美休むのかな。 せっかく三人とも珍しく来たのに」


 「ほんとねー。 いつも必ず毎日絵描きに学校きてるんだけど」



 窓の方に体を寄せて、左手の指で曇ったガラスに落書きを始める飛鳥。 クラシックなへのへのもへじ。 ちょっと細目の。



 「飛鳥、それしか描けないわけ? この前もそれ描いてた」


 「これだけは継美に負けない自信あるんだー、私」


 「そんなの、自慢にならないよ」


 「あはは、やっぱりぃ?」


 大口あけて、飛鳥女史が笑う。 飛鳥はいちいちオーバーアクションが激しいのだけれど、わざとらしいところが全然ない。 ごく自然な感じに好感が持てる。



 「継美ってさ、いままでけっこう油絵で賞とかあちこちもらってるし、やっぱり絵の才能あるのかな。 ・・・・僕にはよくわからないけど」


 「まー、掛須くんにはそうでしょーね。 とろいもんね」


 「・・・・目白と二人してイジメないでくれる?」 


 「だってー、掛須くんからかってるとおもしろいんだもん」


 「継美をからかえばいいじゃないか」


 「だーめ。あの子はアンタッチャブルなのよ」



 そう言うと、飛鳥は急に窓の外に目を向けた。 曇ったガラスの向こう側。


 雪はあいかわらず降り続けていて、地面ももうほとんど白で覆いつくされていた。 木の枝の影になっていて雪の積もらないわずかな部分が、いつもとは逆にくっきりと浮き彫りにされている。



 「あの子ってね、ほら、見たものをそのまま素直に受けとっちゃう、みたいなところあるでしょ。 なんていうのかなー、ものすごく無防備なのよね。 何かを見たときに、自分のフィルターかけないでそのものを感じとっちゃって、もろに影響受けちゃうの」



 ストーブにかざしていた手のひらが熱くなる。僕はあわてて手をどけた。



 「ふーん」



 「だからねー、ついつい構ってあげたくなっちゃうのよねー。 だって、私がしっかり見ててあげないと、いつか流されてどこか手の届かないところに行っちゃいそうで。 卒業したら私と離れちゃうから、心配なんだけと・・・・でも、なんとかなると思う。 うん、なんとかなる。 なるわね。 なるわよ!」


 「そうかな」


 「もっと明るく楽観的に物事考えなきゃー、面白くないじゃない」


 「まあ、そうだけど」


 「あ! そだ、雪合戦しよ。あれやると明るくなるから」



 僕は顔をしかめた。 飛鳥はいつも、いきなり突拍子もないことを言い出す。



 「堪忍してよ、僕は明日、入試なんだからさあ」


 「体鍛えなきゃしょーがないでしょ」 


 「いまから?」


 「やらないよりいいわよ」


 「・・・・何考えてんだか」



 また、高い声で笑い出す飛鳥。 椅子から転げ落ちそうになりながら。



 「元気だね、飛鳥は。 ・・・・卒業することだって、ぜんぜん感じてないみたいだ」



 そう言ってしまってから、僕はしまったと思った。嫌味に取られたかも知れない。


 おそるおそる飛鳥の方を見ると、飛鳥は平然とした顔をしている。



 「ううん、悲しいよ」


 「へっ?!」



 僕は半分拍子抜けして、体の姿勢を思わず崩した。 飛鳥がそう言って、にこっと笑ったからだ。 顔と言葉が一致してない。



 「悲しいって顔してないよ」


 「ばかねえ、悲しいわよ。 悲しくないわけ、ないじゃない」


 「だって、笑ってるじゃないか」



 僕がそう言うと、飛鳥は目を伏せてストーブを見つめた。


 外にはあんなに激しく雪が降っているのに、部室の中は嘘のように静かだ。 ストーブの軽い送風機の音だけが、わずかに部屋を静寂から救っている。 でも、それももうすぐ消える運命。 僕たちのこの体育館と一緒に。



 「・・・・あのね、卒業してこの部室とさよならして、私たち四人がばらばらになるのはとてもさみしいよ。 四人で過ごした高校生活、ほんとに楽しかったもん」


 「うん」


 「でもね」



 飛鳥は壁の落書きを見上げた。 僕たちが去年の夏に、ふざけて書いた文字。


 「私ね、中学の卒業のとき、友達と別れるのが悲しくてしょうがなかったの。 卒業式のあと、少し泣いた。 ほんとに悲しかったけど、でも、高校に来てみたらこんなに楽しい毎日が送れたじゃない。 だからきっと、高校を卒業しても、もっともっと楽しいことが行く先々で私たちを待ってるわよ。 そう考えたら、卒業も悲しくない。 ううん、悲しいけど、もっと先のことが楽しみで、わくわくしてるの。 早くその楽しいことに出会ってみたいじゃない?」


 飛鳥はそう言って、にっこり笑った。


 僕は飛鳥の顔をじっと見つめた。 飛鳥の目が僕たちなんかを通り越してはるか遠くを見ているような気がして、情けないけど、飛鳥の見せた笑顔に、ちょっぴり嫉妬。



 「・・・・飛鳥には負けたよ。ほんと」



 「えーっ?! もしかして掛須くん、私に勝とうなんておこがましいこと考えてたのぉ? よしなよ、無理無理」



 がっくり。



 「なんかやる気無くなった。・・・・明日の入試、もうだめだ」


 「あっ、うそうそ、がんばって掛須くん、応援してるよっ!」


 「飛鳥が言うと、わざとらしい」


 「うーん、これはもう、雪合戦しかないわっ! さっ、いこ、掛須くん!」



 飛鳥が僕の制服の袖を引っ張る。


 僕はなんとなく、飛鳥に引きずられるままに椅子を立った。 雪合戦はしたくなかったけれど、飛鳥に逆らう気がおきなかった。 いま飛鳥の手を振り払えば、その瞬間にこの素敵な友達は永遠に去っていってしまうような、そんな気がして。


 そのとき突然、かちゃっとドアが開いて、さっと冷たい空気が部室に吹き込んだかと思うと、目白が胸を張って入ってきた。 英雄の凱旋。


 飛鳥が僕の手を引っ張っているのを見て、目白はまたかというようにため息をつく。



 「今度は、何の騒ぎだ」


 「あのね、掛須くんが落ち込んでるから、いっしょに雪合戦やろうと思って」


 「雪合戦?!・・・・受験生の言う台詞じゃないな」


 「なによっ、悪い?」



 むきになる飛鳥を横目に、目白は部室の鍵をポケットから出して、ちゃりんと鳴らした。



 「いいから早く帰るしたくしろよ。 かなり本降りの雪だから、早めに帰った方が良さそうだ」


 「なーんだー、がっかり。 ごめんねー、掛須くん」


 「い、いいよっ」



 しっかり僕にあやまるところが恐い。本気で雪合戦やるつもりだったらしい。



 「さ、部室の鍵閉めるぞ。 ストーブ消してくれ」



 目白はそう言うと、さっさと自分の荷物をまとめ始める。 飛鳥はあわててストーブを消すと、紺色のコートに手を通した。


 僕も、長いマフラーを首に巻きながら、かばんを手にして立ち上がる。


 目白が鍵穴に鍵を差し込む音。


 


 


 帰り道の桜並木に降りつもる雪は、何故だか、少しだけ暖かいような気がした。 


 


 


<FIN OF PART Ⅲ : TO BE CONTINUED TO PART  Ⅳ


 


 


ameba lanking banner





スポンサーサイト


丘の上の喫茶店のお茶会話
1話目から
思ってたんですが、継美さんて死んじゃうのかなぁ・・・?

なんか、そうなって欲しくないと3話目読んでました。

マスターは、雪国生まれ?

私が小学5年の頃大阪にいました。京都よりの場所高槻市です。
異常気象だったのか、雪が10センチぐらいつもり、こんなことは滅多と無いので全校生徒、1時間だけ授業無しの雪遊びに変更。

凄く楽しかったです。

みんなびしょびしょでしたが、いい体験に大喜びの子ばかりでした。

懐かしいことを思い出しました。
【2007/02/25 23:10】 URL | okannno-nikki #- [ 編集]

okannno-nikkiさん
こんばんはー。

こちらは、ずいぶん暖かくなってきて、もう雪は降らなさそうですv-276
でも、こちらの地方でも、ときおり3月に雪が降ったりします。
さすがに、雪国とまではいきませんが…v-277

雪が降ると、景色が楽しいんですが、道の雪かきをしなければならないのが、どうにも
困ったものですe-154
土日ならまだいいんですが、平日に会社に行く前に…となると、もう涙ものです。
寒いのに早起きしなきゃいけませんし、会社で、こ、腰がe-16v-356

okannno-nikkiさんのお子さんは、雪遊びの経験はあまりないのでしょうか。
楽しいんですけどねv-276
【2007/02/26 23:26】 URL | カケス #Hte2UAXI [ 編集]


私も。継美さんが自殺しそうで・・・ビビッてます(^_^;)
マスターの小説は次が早く読みたくなるね!
読む前は長編もので後ずさりしちゃったけどm(__)m 

飛鳥の言葉イイv-267 ・・。前向きで心に響きました。
・・・・飛鳥には負けたよ。ほんと

では。このまま4話に行って来ます(^o^)丿

【2007/03/06 15:20】 URL | Sally Garden #- [ 編集]

Sally Gardenさん
こんばんはー。

>読む前は長編もので後ずさりしちゃった

うわ~、申し訳ありませんv-436
この恥ずかしい企画はじめる前に、分割?を
考えてみたんですが、難しくてv-394

4人の誰がいちばん自分にしっくりくるか?で、
けっこう、性格判断ができそうな話かも…v-507v-170

4話へ…行ってらっしゃいませv-398
でも、きっと、記事が長すぎて、帰って来れないかも…v-406

Sally Gardenさんの遭難救助に行かねばv-451v-452v-450

 
【2007/03/06 23:39】 URL | カケス #Hte2UAXI [ 編集]



咲きに咲くらん(4) | BLOG TOP | 咲きに咲くらん(2)
珈琲片手に お茶会話を書いてみたりする














マスターにだけ表示を許可する





上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。